タイプ3の準則は、規則の例文としての準則です。教団の2つの準則はこのタイプです。
このタイプの特徴と必須条件は以下の2点です。
- 上位規定で、その規則において定めるべき項目が明示指定されている事。
- 下位機関でその準則を参照し(もしくは参照しないで)策定された規則は、上位機関で承認を受けるべき事が定められている事。
このタイプの準則は、上位機関で規則に従っているか否かのチェックがなされますから、準則そのものは単なる参考例として位置付けられるのです。準則の記述自身は規則としての強制力を持ちません。下位機関で制定され、上位機関で承認された時に初めて、実際の規則として強制力を獲得するのです。
「社会福祉法人の定款準則」の例と「市町村例規準則集」
社会福祉法人定款準則は、社会福祉法の第31条に基づいて社会福祉法人を設立申請するための参考例です。
この定款準則は厚生省が作成したものを、許認可権を持つ所轄庁である都道府県が提示しています。
まず大阪府が提示している、社会福祉法人定款準則を参照してみましょう。この例文は、元々は厚生省が作成した定款準則を使って大阪府が提示していますから、他府県で提示される定款準則と同じです。
この例文を参照して作られる社会福祉法人定款準則はどのように定められていなければならないかは、社会福祉法第6章(社会福祉法人)第2節(設立)第31条(申請)の第1項にて定められています。
社会福祉法の全文は上記から参照するとして、第31条第1項を確認してみましょう。
第31条 社会福祉法人を設立しようとする者は、定款をもつて少なくとも次に掲げる事項を定め、厚生労働省令で定める手続に従い、当該定款について所轄庁の認可を受けなければならない。
- 目的
- 名称
- 社会福祉事業の種類
- 事務所の所在地
- 役員に関する事項
- 会議に関する事項
- 資産に関する事項
- 会計に関する事項
- 評議員会を置く場合には、これに関する事項
- 公益事業を行う場合には、その種類
- 収益事業を行う場合には、その種類
- 解散に関する事項
- 定款の変更に関する事項
- 公告の方法
見事に第3のタイプの準則の特徴を持っています。
大阪府が提示する定款準則
このタイプには他にも色々な例があります。
市町村の条例作成時に参照するための例文集が第一法規から出版されていますので、関心ある方はそれを参照下さい。
宗教法人「日本基督教団○○教会」規則(準則)がこのタイプである確認
宗教法人法第2章(設立)第12条(設立の手続)第1項を参照し、このタイプである事を確認しましょう。
第12条 宗教法人を設立しようとする者は、左に掲げる事項を記載した規則を作成し、その規則について所轄庁の認証を受けなければならない。
- 目的
- 名称
- 事務所の所在地
- 設立しようとする宗教法人を包括する宗教団体がある場合には、その名称及び宗教法人非宗教法人の別
- 代表役員、責任役員、代務者、仮代表役員及び仮責任役員の呼称、資格及び任免並びに代表役員についてはその任期及び職務権限、責任役員についてはその員数、任期及び職務権限、代務者についてはその職務権限に関する事項
- 前号に掲げるものの外、議決、諮問、監査その他の機関がある場合には、その機関に関する事項
- 第6条の規定による事業を行う場合には、その種類及び管理運営(同条第2項の規定による事業を行う場合には、収益処分の方法を含む。)に関する事項
- 基本財産、宝物その他の財産の設定、管理及び処分(第23条但書の規定の適用を受ける場合に関する事項を定めた場合には、その事項を含む。)、予算、決算及び会計その他の財務に関する事項
- 規則の変更に関する事項
- 解散の事由、清算人の選任及び残余財産の帰属に関する事項を定めた場合には、その事項
- 公告の方法
- 第5号から前号までに掲げる事項について、他の宗教団体を制約し、又は他の宗教団体によつて制約される事項を定めた場合には、その事項
- 前各号に掲げる事項に関連する事項を定めた場合には、その事項
これも規則作成に必要な事項の提示と上位機関の認証が宣言されており、タイプ3の条件をそろえています。
宗教法人法の第12条を確認
「日本基督教団○○教会」規則(準則)もこのタイプである確認
教規第85条 教会は、本教団の信仰告白、教憲、教規および教団諸規則にのっとり教会規則を制定し、教区総会議長の承認を受けるものとする。
教規第86条 教会規則には次の事項を規定しなければならない。
- 名称
- 所在地
- 礼拝、伝道その他集会に関する事項
- 教会担任教師に関する事項
- キリスト教教育主事に関する事項
- 信徒に関する事項
- 役員に関する事項
- 財産の管理および財務に関する事項
- 公益事業に関する事項
- 合併および解散に関する事項
これも第85条で上位機関の承認が宣言され、第86条で定めるべき事項が宣言されており、タイプ3に条件をそろえています。
日本基督教団教規第4章第12条を参照
これまでに準則の3つのタイプについて世間での例を参照しながら解説して来ました。
上記までで、準則は例文で規則ではない事が確認できましたが、個別教会規則は規則です。
これまで検討して来た結果からは、教団の2つの準則はいずれも第3のタイプで規則作成の際の例文であることが明らかになり、準則に書いてある事をまもらなったから教憲教規違反であるとの論理が成立しないことは明らかになりました。
ただしこの準則に従って作成された個別教会規則には従う必要があります。そのあたりは次回以降解説します。
(攄十戒&羜十戒)