さて、本日は日本基督教団の多くの方からは、驚くような問題提起をします。
この問題を取り上げるのは、教憲教規を解釈する上で大切な要素を明らかにすることの出来る格好の素材で、なおかつ、聖餐の問題のように教団運営方針で対立しているように感じられる双方の関心からは離れた事項で、たぶん冷静に私の展開する問題提起を聞いていただける課題だと思うからです。
私が参考にしている『法令解釈の常識』によると、法令解釈を実行し適用するという作業は、「事実の確定」「法令の発見または検認」「具体的な法令の当てはめ(法令の解釈)」という三段論法の適用を通じて完成されると言っています。いかにそれに従って論理を進めます。断っておきますが、私は日本キリスト教団出版局の『教憲教規および諸規則』と信仰職制委員会の『先例集』のみを参考に事実を推測していますから、実はそれは違うという事もあるかもしれません。その場合には、私の過ちを暖かくご指摘ください。間違いを改め、再度検討します。
「事実の確認」
ここで問題にする事実は以下の6点です。
- 2006年10月23日に多分教団常議員によって「セクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規則」(以降では「セクハラ防止規則」)が制定されたこと。
- 同年10月26日の「教規の変更」決議においては、「セクハラ防止規則」を定めるとの条文変更・追加等はなされなかったこと。
- 教憲第11条は「本教憲を施行するに必要な規定は、教規によって定める。前項の教規は教団総会において出席議員3分の2以上の同意をもってこれを定めるものとする。」と定めていること。
- 教憲および教規の変更、教団諸規則に関する事項は、教団総会の処理すべき事項であること。(教規第18条の第1項8号および9号)
- 上記の理由から、常議員会は教団総会からの委任を受けなければ、教憲の施行に必要な規定を定める権限を有しないこと。(教憲第11条、教規35条の1項2号)
- 教憲第11条の規定に従って定められた、教規に基づく教団諸規則とは、教規の条文中に「○○に関する規定・規則は別に定める」と明記してあるものであること。(『教憲教規および諸規則』においては、2つの準則、明らかに教団の諸規則になりえない3つの付録、宗教法人「日本基督教団」規則、今問題にしている「セクハラ防止規則」、を除けば全て教規に別に定めるとの明示あり)
ただ、常議員会がこの件について有効な委任を受けていたかどうかの事実はまだ未確認です。
「法令の発見」
関係する法令の発見と検認ですが、以下の6件の条文です。
- 教憲第11条(教規の制定に関する条文) この条文は現在有効です。
- 教規第18条の第1項8号と9号(教団総会の処理項目) この条文も現在有効です。
- 教規第35条の第1項2号(常議員会が委任を受けての処理事項) この条文も現在有効です。
- 教規第170条(教規の変更に関する条文) この条文も現在有効です。
- 「セクハラ防止規則」 この規則の有効性が問われている。
- 教憲第5条(教団の政治の原則に関する条文) この条文も現在有効です。
「具体的な法令の当てはめ(教憲教規と規則の解釈)」
法令(規則)が有効であるかどうかについて調べるときは、『法令解釈の常識』によれば、
- その法令(規則)が上位の規則(教憲および教規のもとで、適法に制定されたものであるかどうか。
- その法令(規則)が施行日を向かえ、すでに効力を生じて具体的に適用できるようになっているか。
- 法令の廃止・停止・失効等、法令の効力を消滅させまた停止させるような 事実が存在しないか。
を調べる必要があります。
今回の「セクハラ防止規則」制定時の手続きを検討すると、
- 常議員会が、規則制定の有効な権限を持っていたのかどうかが問題です。その意味では、私が確認できていない教団総会からの委任の有無が問われます。委任がなければ越権行為として有効性は否定されます。
- 上級の規則に基ずくための上位規則における整備がなされて、有効性を獲得できる様に整備されているかの観点については、整備されていないことが明らかです。
従って、「セクハラ防止規則」は、その制定過程で教規の変更を平行して実施がなされていないために、教憲第11条違反となっている。また制定の過程においても、教憲・教規で定められた正規の手続きを踏まえてないのでその面からも有効性に疑問が残ります。
この「セクハラ防止規則」の制定は、教団の中でほとんど反対のない事柄ですから(私の思い込みかも知れませんが)、有効との解釈を編み出す必要がありますが、どのように、工夫できるか。明日以降の課題とします。
唐突な問題提起でしたが、おかしいと思われた方はコメントください。(攄十戒)